レジェンドライター巨砲を前に揺るがぬ天然失礼。 平成最後の怪童「YOU」
記事一覧へ公開日: 2018/11/08
巨砲選手のインタビューといえば必要以上に長いまくらが特徴だけど、今回は短め。というのも本日のゲスト、YOU(ヨー)くんはジャンルで言うと確実にモンスターなんだけど、身長が5メートルとか主食が石といったわかりやすい特徴を持たないんですよ。
よーく見ると『あれ、人の3倍くらい枝毛があるな』レベルの怪物性。その何とも言えない感じを理解してもらいたくて、なるべくインタビュー部分を多く採用することにした。早速、プレイボール!
怪物は1球目を投げる前からその微妙な本領を発揮した。前回掲載した場内すみれのインタビューを済ませた巨砲選手が喫煙所で一服してから部屋に戻ると、すでにYOUくんがスタンバってたのだが、オデの姿を見るとヒロミ・郷のような勢いで「どうも、YOUです!」。そしてなぜかテーブルの上にはデンと財布が置かれていた。
これまでのライター生活でスナックのママから宇宙飛行士まで色んな人にインタビューしてきたけど、財布を出してるのは多分、YOUくんが初めてだよ。こんな違和感があった記憶ないから。
「それはいい経験しましたね」
あっ、ありがとうございます。インタビュー時に財布を机に置いてはダメってルールはないけど、写真を撮る時に邪魔になるでしょ。一体、何のアピールなの。
「何かジュースでもおごってあげようかと思って……」
みなさんにもこの男の怪物性が何となく伝わっているのではないしょうか? もちろん財布を引っ込める気配はまったくありません。
ごめんね、気を使わせて。
「ところで今回のインタビュー、動画を撮ってYouTubeにアップしてもいいですか? 自分のチャンネルにアップしようと思ってるんですよ」
……巨砲選手はこれからインタビューして原稿をまとめるんだよ。動画になったらインタビューする意味がなくなるでしょと、やんわり断ります。やる気があるのは感心だけどマイペースが過ぎるよ。
まず、何でYOUなの?
「EXILEのファンなんですよ」
……どうやらHIROさんみたいな英語表記にしたかったらしいです。やっぱり天才! しかし、こう言っちゃ何だけどYOUくんからEXILE要素は微塵も感じられない。
多少、格好とか見た目をそっちに寄せたりはしないの?
「それはしないです。あくまでファンなんで」
ペンネームの由来ってインタビューにおける型稽古みたいなもので9割方、聞いても盛り上がらないんだけど、久しぶりに心の底から聞いて損したと思った。
で、EXILEのファンがどうしてこの仕事をやろうと思ったの?
「僕はもともとギャンブルやってる人はバカだと思ってたんですよ。ホントはいけないんですけど高校とか大学の同級生でパチンコやってるヤツらに、俺はおまえらみたいにはならないからなって言ってたくらいで」
元々は否定派なんだ。
「それが大学辞めて、白金のシェラトン(ホテル)でベルボーイをやってたんですけど……」
ちょっと待って。シェラトンのベルボーイやってたの? YOUくんは良く言えばフランク・シナトラが後継者に指名してもおかしくないくらいフランクだけど、悪くいえば礼儀知らずというか、人との距離感を上手にとれない天然失礼なタイプじゃない。ホントにベルボーイやってたの?
「ベルボーイって指名制なんで、まずお客さんに顔を覚えてもらわないといけないんですよ。だから印象に残るようにあえて上からいってました。それでシェラトンは日本ハムの定宿なんですけど、こんな感じで接してたら中田翔にガチでめちゃくちゃ怒られて。でも、外国人のお客さんには結構、評判が良かったですよ。まずアイ・キャン・ノット・スピーク・イングリッシュから入って」
まあ、好き嫌いはハッキリ別れるタイプだよね。ゴメン、話の腰折って。
「同じ職場にパチスロ好きな人が多くて、夜勤の後に誘われて朝からホールに行ったんですよ。そしたらめちゃくちゃ楽しかったんですけど、ホールに行くたびに給料がドンドンなくなるようになって」
ああ、勝てなかったんだ。
「ええ、まったく勉強してなかったんで」
並のライターならここで勝つために努力をするところだが、怪物はやはり一味違う。
「それでパチスロをやめようと思ったんです。でも、全然やめられなくて。そんな時、弟にネットにパチスロ動画がいっぱい上がってるから、それを見て勉強すればって言われたんです」
ここでようやく勉強開始かと思いきや……。
「それで、たまたま見た動画で演者さんが収入について話していて、パチスロ打っておしゃべりするだけで、そんなに稼げるのかと。だったらこっち側の人間になろうって。おしゃべりもパチスロもどちらも好きだったんで」
そしてリアルスターズのメンバーに応募して、めでたく合格したわけだが……何でしょう、この共感できない感じ。YOUくん、このままじゃ多分、人気でないよ。
「実際、人気ないですしね(笑)」
ちなみにどれくらい稼いでるの?
「僕は全然、稼げてないです。交通費込みで大体、20万~30万くらいですね」
YOUくんには申し訳ないけど、それでもそのくらい稼げるのかっていうのが正直な感想。チミをひとりで現場に行かせるの不安だもん。ちゃんとお店の人にあいさつしてる?
「あいさつはしてますけど、今日みたいな感じですよ。どうも、YOUですって。出てなかったら帰る時に『今日は厳しかったっすね』って店長さんに言っちゃったり」
そ、そうなんだ。それはフランクが過ぎるね。人と変わったことして印象に残りたいって考えはわかるけど、やっぱり仕事相手にはしっかりした部分を見せないとさ。実際、売れてる人ほどちゃんとアイサツを……
「してるんですよねー! ホントに」
と、感心しているが、この男は多分やらない。
でも、そのくらいの収入じゃ先々、不安でしょ。
「不安しかないですよ。しかも、仕事はほとんど1万回転チャレンジなんですけど、最近、ぱちタウンに鋼心軍というそれ専用の軍団がデキてしまって、仕事が激減してるんです」
主戦場だった1万回転の仕事も減り割と崖っぷちらしい
何か企画を考えてアピールするとかやってかないと。
「企画は現段階では無理なんですよ。前にいくつか出したけど結局、僕の知名度が足りないから採用されてないんです。だからYouTubeをやって、まずは知名度を上げようかなと。それでDMMの方からこの間の企画やってくださいと(言わせる)」
YouTubeの世界もそんなに甘くないというか、むしろこの業界よりも圧倒的に厳しい気がするけど。それはさておき同じ企画でも誰が出演するかで採用されるか否かが決まることは確かにある。でも、それだけじゃない気がするんだよ。オデが社員だったら正直、YOUくんを売ってあげようって思わないもの。
「それは自分でもわかってるんですよね。実際、社員さんにも気に入られてないですし」
どうなの、担当A?
担当A「アイサツもそうなんですけど、もともとYOUはオーディションの時、打つ台についてめちゃくちゃ勉強してきたんですよ。細かな数字もきちんと覚えていて。入った時は結構、期待されてたんですよ」
そうなの?
「あの時はすべてをそれに注ぎ込みましたね。手にもびっちり数字をメモって」
担当A「ただ、入ってからはまったくそういうのをやらないんですよ」
どうしてやらないの? 合格した以上はそれを期待されてるわけでしょ。
「あれはオーディション用のキャラなんで」
そう言われちゃうと、そうなんだぁとしか言いようがない。ちなみに採用を決める時、やまキンは『あいつはちょっと信用できない』と最後まで渋っていたそうである。あの男、見る目あるな。
じゃあ、珍しい生き物が好きな森本(レオ子)ちゃんが、推したのかな(後で確認したらアタシも落ちると思ってたって言ってたけど)。
「シェラトンもそうですけど、どうにかして潜り込む能力は高いんですよ。ただ、そこからうまくいかないんですけど」
ひとつ確実に言えるのは森本ちゃんが好物のタイプの男ではある
冷静な自己分析はできても、欠点を改善しようとは考えない鋼のダメメンタル。
結局、どういうタイプの演者になりたいの?
「演出、特に液晶演出の楽しさを伝えられるライターになりたいですね。ちょっとした違和感で熱くなれる部分を中心に(伝えたい)。『高設定確定画面が出ました! この店設定使ってます』みたいなアピールに力を入れてる人もいるけど、そういうのは正直、どうでもいいと思っていて」
どうでもいいと思うのは良いけど、そうじゃない人もたくさんいるからね。磨いて、政治力を!
YOUくんてバカじゃないとは思うけど、そこまで利口でもないよね。そして無駄に自分に自信がある。
「自信はありますね。ただ、この状況ではさすがに絶対、自分が売れるとは思ってはないですけど」
それが分かっているのに売れ線に寄せることを良しとしない。この男は25年生まれるのが遅かった。パチンコ雑誌の黎明期はそういう人ばっかりだったもん。巨砲選手も気にいらないことには「ふざけやがって、バーロー!」しか言ってなかったからね。ああ、若かったよ。それを続けていくうちに周りがこの人はクソめんどくさい人なんだなと、なんとなく受け入れてくれたお陰でどうにか生き残ったけど、時代も違うし、DMMはそんな悠長な会社じゃないからね。
ちなみに25年前のオデがチミと会ってたら多分、ケツを蹴っ飛ばしてる。YOUアヌスよ、命拾いしたな。
実家でくつろぐような姿勢でインタビューを受けたるあたりが怪物たる所以
正直、今のままだとYOUくんみたいなタイプが単体で売れるのはしんどいと思うよ。誰か自分を生かしてくれる人を見つけないと。
「巨砲さん、どうですか。僕を生かしてみませんか」
いや、申し訳ない。オデにはまだYOUというピアノを引きこなせる腕がないんだ。多分、タイプ的には年上と組むより、同世代の人と組んだ人が良いと思うよ。年上は超高確率で最終的に怒らせちゃうタイプだと思うから。
「巨砲さんは怒らないですよね? 僕、巨砲さんのことは、おもしろいと思ってますよ」
あ、ありがとう。オデもYOUくんのことは大好きです。それはいいとして、リアルスターズって仲良いんでしょ。こないだもツイッター見たら、みんなで誰かの誕生日を祝ってたし。
「仲は良いですね」
だったらリアルスターズのみんなで企画を考えて動画とかを撮れば良いんじゃない。そこでそれぞれが個性をアピールして、リアルスターズ全体で知名度を上げていけばいい。仲の良い人と一緒にやれば動画のデキも良くなるだろうし、きっとキミの意外な一面も出ると思うんだよ。ちなみにパチスロ以外で他人に自慢できることって何かある?
天才はしばらく考えてからこう答えた。
「弟思いですね。男三兄弟で下に二人いるんですけど、今まで1度もケンカしたことがないんですよ」
確かに仲は良さそうだよね…仕事に生きるかは別として。
そ、そうなんだとしか言いようのない情報をありがとう。動画で伝わるといいね。
最後にひとつアドバイス。自分でおもしろさを判断するのも大事だけど、周りが自分の何をおもしろがってるかを少しだけ考えてみて。YOUくんの一番ダメなところは自分で下したおもしろいの判断が9割方間違ってるところだから。
そしてこのインタビューから数日後、YOUくんはツイッターで柳沢超(元忍者)から昔、ダンスを習っていたという味わい深いエピソードを、今日の最高気温は18度ですよ、くらいのテンションでつぶやいていた。……そういうところだよ。
平成最後の怪物の微妙な魅力がみんなに伝わることを祈るばかりだ。
YOU編 完
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