失われた40年
記事一覧へ公開日: 2020/04/16
たとえ用があったとしたって、できることなら仮病を駆使して外に出たくない出不精の僕からしたら、不要不急の外出自粛はさほど苦痛ではないのだけど、ずっと家にいたら必然的に食っちゃ寝え、食っちゃ寝えの生活になるわけで、食べすぎによるものなのか、はたまた大量に買い込んだ500円の安ワインを飲みすぎたせいかはわからないけれど、トイレにこもることが多くなった。
和式便器が好きだった。愛媛の実家も、母方の実家も、もとはどちらも和式便器だったこともあって、あの、いわゆるヤンキー座りが僕にとってのトイレスタイル。時代の波がやってきて和式便器が絶滅危惧種に指定されていくなかでも、僕はずっと洋式便器の便座の上にヤンキー座りをしてあらがってきたし、その結果、何度となく便座を壊してきた。
便座クラッシャー。人は僕をそう呼んだが、お世話になっていた塾長おじさんの家の便座からバキっと音がした3年前を境にヤンキースタイルを捨て、洋式便器に洋式座りをするという正常位に落ち着くこととなったが、それでも、どうしても受け入れられないものがあった。
温水洗浄便座。てぃーおーてぃーおー、TOTOの製品名ウォシュレットといったほうが馴染みがあるかもしれないが、こいつだけはまったく理解ができなかった。
※正式名は温水洗浄便座でTOTOの製品名がウォシュレット。
正式名は鍵盤ハーモニカなのに、一般的にヤマハの製品名であるピアニカと呼ばれるようなものだろうか
肛門にダイレクトに水を噴射させるって、どんな発想をすればそんな機能を欲する人間になるのだろう。ウォシュレットが好きでたまらないという人の話を聞くたびに、ああこの人は肛門に水をあてて喜ぶ人なんだと密かに変態のレッテルを貼ってきたし、肛門にあたった水が再びノズルにふりかかって、それが次の誰かに再び噴射される、肛門永久リレーが僕の知らないところで繰り広げられているのだと思っていた。
しかし、有り余る時間というのは人を勤勉にさせる。普段なら気にもしない、てぃーおーてぃーおー、TOTOの文字を見つめているうちにウォシュレットのことが気になりはじめ、ウィキペディアの門をたたいてみたら、あら。後輩だと思っていたウォシュレットは1980年生まれ、松坂世代の同級生。懸念事項だった肛門永久リレー対策も万全で、跳ね返りの水が周囲にかからないよう、噴射の角度を43度(ビデは53度)と、ち密な計算にもとづいて設計されているという。
知れば知るほど、押してはいけないはずだった禁断のボタンを押したくなるのが人というものだ。これまでは目にも入らなかった、入っても間抜けにしか見えなかった「おしり」の文字がイラストが、なんだかとっても愛おしくなって、ぽちっ。そしてうぃーん。しゃーーー。
※おしりはともかく、ビデとかパワー脱臭とか、なんだか怖くて押せないボタンが散りばめられている
10年前にレーシックをした際に、なんでもっと早くやらなかったんだと後悔したが、それ以来の衝撃と後悔。
失われた40年を取り返すために、これからはいかなるときも水勢MAXで噴射することを誓いたい。
一歩が踏み出せず、やらないまま放り出していることってたくさんあるけど、コロナが終息したなら、そんなこともひとつずつ積極的にチャレンジしていこう。そんなことを思った。ええ、ええ。お察しの通り、今週も引き続き、ヒマなんです。
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