プペルを見た日【ネタバレあり】
記事一覧へ公開日: 2021/01/25
最近、何かと話題の映画『えんとつ町のプペル』を見ることにした。
この映画の評価は賛否両論真っ二つ。人の好みは賛否両論、十人十色。なので、それは当然のことなのだが、原作・脚本が西野亮廣氏ということでファンorアンチが多く、評価が両極端になっているように思える。純粋に作品の善し悪しだけで評価されていないように思える。実際、現在進行形で作品以外のところで何かと話題になっている。
幸い、私は芸能界に疎くて良くも悪くも西野亮廣氏の活躍をあまり知らない。色眼鏡を掛けずに作品を見ることができるというのは喜ばしいことだ。
「信じぬけ。」
映画館に飾られていたポスター。原作である絵本を読んだことはないが、物語のあらすじや、この作品は『夢を信じることの大切さ』が描かれていることはなんとなく知っていた。
チケットを購入して、館内に入ると空席が目立っていた。時期が時期なうえ1カ月前に上映が開始された作品ということもあって、観客の数は20人前後。親子連れ、カップル、友達同士と文字通り老若男女いた。
ホリエモンこと堀江貴文氏曰く「素晴らしすぎて4回泣きました」らしいので期待は高まる。
私はなかなかの涙腺の緩さを自負しており、かつてゲーム『ファイナルファンタジーⅧ』のエンディングで泣いたものだ(友人に「どこで⁉」と突っ込まれた)。正直、プペルを見ようとした理由は、「泣きたいから」というところもあった。
上映開始。(※以下の文章には作品のネタバレが含まれています。あらかじめご了承ください)
圧巻だった。圧倒的だった。オープニングを見て、私は一瞬でプペルの世界に引き込まれた。
美しすぎるグラフィック、壮大な音楽。開始10分で私の気持ちは最高潮、「どうして、この作品を酷評できるのだ」とすら思った。
これは傑作間違いナシ、これは絶対に泣ける。そう期待せざる得なかった………のだが、オープニングが終わって登場キャラクターの口から「異端審問官」というワードが出てくると、現実世界に叩き戻された。
異端…審問官……⁉
プペルに思い描いていた雰囲気と真逆に位置するワード。どうも物語の舞台は中央組織に監視されている閉鎖された町のようだ。中央組織の考えに逆らう“異端者”は処罰されるそうだ。
まさかまさかのディストピア。
いやいやいや、私はそんな殺伐とした物語が見たくて映画館まで足を運んだのではないぞ。
映画『アイランド』のようなディストピア作品は好きなのだが、ほっこりと心温まるストーリーを期待していただけに唖然。
もちろん、主人公・ルビッチとゴミ人間・プペルの友情、周りからバカにされても夢を信じるルビッチの強さ、親と子の絆…といった物語の本筋は描かれていた。
ただ、物語の枝葉の部分…重い世界観・キャラ設定が気になりすぎて本筋に集中できない。一般的な作品なら裏設定となって隠されているような要素が堂々と表に出ていた。そして、物語が終盤になると貨幣経済の問題点が語られた。
貨幣経済に異を唱えた者が権力者から弾圧されて、その思想を受け継いだ人たちが理想を叶えるためにこの閉鎖された町を作ったそうだ。
「私はいったい何を見ているのだ」
感動したくて、泣きたくて、プペルを見に来たのに、どうしてこうなった。
最終的に閉鎖された町は解放されて物語はハッピーエンド。冷静に考えたらハッピーなのかどうか疑問が残るけれど、一応ハッピーエンドで締めくくられた。
物語の本筋部分には涙腺が刺激されるところはあったのだが、それらを全て打ち消す強すぎるメッセージ性の数々。もはや、雑音と言ってもよい。
エンドロールが流れて周りが明るくなると、「わかんなーい」とお子様の声が館内に響いた。うむ、おじさんにもよく判らなかったよ。
映画を全て見終わって、ふと疑問が生じた。原作の絵本では、これらの雑音はどう描かれているのか。調べてみたら、ネット上で絵本が無料公開されていたのですぐさまチェック。
そこには、私の期待していた通りの、期待していた以上のプペルが描かれていた。
絵本『えんとつ町のプペル』は素敵な作品だった。現代社会に対するメッセージ性はあるが、説教臭さはなく雑音に感じることはなかった。映画を見て私が首を傾げた部分は、“全て”映画版でのみ語られたモノだった。
【感想】
映画『えんとつ町のプペル』は蛇足。
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